久しぶりの休日。
 としては久しぶりではなかったが、リョーマと休日が被るのは久しぶりだ。日頃疲れているだろうリョーマを気遣ってたまにはゆっくりとした一日を一緒にすごそうと、は自分の部屋に彼を招いた、はずだったのだけれど。
「ね、ちょっと、リョーマ!」
「何?」
「私今日そんなつもりで……っ……部屋に呼んだわけじゃないんだけど!」
その想いとは裏腹に、リョーマはを腕の中に閉じ込める。やんわりとした抵抗も虚しく、すっぽりと背後から腕の中に収まってしまったかと思えば、リョーマの舌が耳や首筋を這っていく。
「知ってる」
既に言葉少なになってしまった彼に半ば諦めたように身を預けるものの惰性での言葉だけは反論を続ける。
「じゃあ離してよ」
「ちょっと黙って」
それをリョーマは予期してか、の顔をぐっと自分の方へ向けると唇を塞いだ。
「んん」
唇がわずかに離れるたびに反論しようと口を開いたが、リョーマの舌が執拗に口内を弄るために、それらは飲み込まれてしまった。ちゅっ、というやわらかい音が幾度も響く。その間にも彼の手は服の上からの身体をなぞっていった。舌を絡め下唇を食むとどちらのものともわからない唾液がの口の端から一筋伝って落ちる。最後にまた音を立てて唇を離すと、さっきまで活発だったの瞳がほんの少しだけ緩んでいる。それにリョーマは口角をあげて頬に唇を寄せた。唇をだんだんとまた首筋へと押し当てていく。小さな、抑えられた声を漏らすを覆う布を、一枚また一枚とはぎ取りうなじに唇を落として痕をつけると、リョーマの指がそこからつうっと背中の中心をなぞった。 が声を上げて背筋をのけぞらせた瞬間に、リョーマはぱちりとその背中の小さな金具を外す。愛らしい下着を腕から抜き取り、リョーマ自身もシャツを脱ぐ。彼女の細くやわらかい体躯を背後からしっかりと抱きしめた。
 いつものからすると幾分か体温の上がっているしっとりとした肌と、リョーマのしっかりと引き締まった身体が密着する。リョーマは彼女の首筋にかかる髪に顔をうずめる。ああ、彼女の匂いがする、と、そう安心するために。そのまま鼻で髪をかき分けて、もう一度うなじにキスをした。
「ベッド」
の耳元で一言静かに言うと、
「うん」
とだけもう従順となってしまった返事が返ってくる。それで一度肌を離して、リョーマは彼女を横抱きにしてベッドへと降ろした。白いシーツがふわりと沈む。リョーマもその沈みに足をついて、に覆い被さった。昼間の情事は全てが見えてしまうのでいけない、と恥ずかしさを隠せずに は胸元を腕で隠そうとするが、それはやんわりと遮られる。丸みを帯びた見目にもやわらかい胸が、の呼吸とともに静かに揺れる。鎖骨に唇を落としながら、リョーマの大きな手がその膨らみに触れた。円を描くように動くそれにやわらかな胸は形を変えていく。やんわりと動いているはずなのに、の呼吸は浅くなっていった。一方唇は、鎖骨や首筋や、耳の後ろにいくつもの痕をつけていく。耳たぶに歯をたてて食んだと同時に、リョーマの指先は胸の先端を摘んだ。
「ひゃ、あ」
とうとうの声が漏れた。一度抑えを失った声は、止めることもできずに段々と大きくなっていく。
「や、あっ……ん」
絶えずリョーマの手は彼女の胸を揉みしだき、その先端を転がす。耳たぶを食んでいた唇もいつの間にかもう片方の胸を愛撫していた。
「あっ……っ」
もう片方の胸の先端を、リョーマの唇がやわく噛む。舌で転がしながら吸ってやると、は声を上げて身をよじった。歯止めを失ったの声だけが明るい室内に響く。 自身の羞恥心がすっかり快感に飲み込まれてしまった頃、リョーマの無骨な指は彼女の下の方へ下っていった。履いていたスカートを脱がせ、下着の上からそこを触る。布越しでもわかる程にそこは湿っていて、しばらくゆっくりと撫でていると突起が膨らんでいくのがわかった。くちゅり、と小さな音がの声に混じって響く。とうとうその下着もするりと脚を滑らせて脱がせてしまうと、はリョーマの首に腕をかけて抱きしめた。
「……っ!」
リョーマの指が直にその濡れた場所へと触れる。無骨でありながら細く繊細なその指がゆっくりと中に入れられ、はより強く彼を抱きしめた。くしゃりとリョーマの髪が掴まれる。ゆっくりといたわるように出し入れされていた指は、いつの間にかその数を増やしていた。そして、くっとの中の一部分を刺激した時、彼女から最も妖艶な声が漏れた。
「リョー……マっ、そ……っ!」
「ん、ここ、好きだよね」
そこを刺激するたびに彼女の身体はびくりとはねる。段々と動きが大きくなっていく指にぐちゅぐちゅという水音が増し、の耳にもそれははっきりと聞こえた。それがには恥ずかしくも、しかし二人どちらもの劣情を煽るには最高の素材となる。
 いよいよの呼吸が、浅く、荒く、なってくる。
「やだ、やだ、そこ……っ、あっ」
「ほんとにいやなの? じゃあやめよっか?」
快楽に飲み込まれていく頭の中で、しだらなく言葉が流れていく。それがただの言葉のあやであることを承知の上で、リョーマはそう言って指の動きを緩めた。
「や……あぁ、」
絶えず流れ続けていたの嬌声が止む。目尻には涙がたまり、頬は上気してたまらないというのに、彼女には最後の理性がまだ残っていた。リョーマはそれを見越してまた初めのようにゆっくりと、指を引き抜こうとする。軽く痙攣している彼女の中はその指を、ひいては彼自身を、欲している。指を引き抜きながらリョーマは彼女の快感の盲点を一度だけくっと抑えた。
「やああ!」
は一際大きな声をあげて、リョーマの手を自らの手で止めた。
「おねがい、やめないで」
抱きしめたリョーマの耳元で、語尾が消え入るような声では懇願した。その言葉にリョーマは口角をあげて、指を一気に彼女の中へ押し込む。さっきよりも幾分も強く刺激される。
「やっ……ああっ……やだっ、あっ」
の頭の中が白くぼやけていく。
「やだって、またやめちゃうよ?」
突然の強い快感で何も考えられない頭の中にリョーマの声が耳元から響くと、 にはもうなにもわからなかった。
「やだぁ……! やめちゃ、や、あ! そこ、きもち、い、の……っ!」
するすると言葉が溢れ出す。理性の箍が外れてしまったの言葉は、さらにリョーマを熱くさせた。
「やぁ、もっと、リョーマっ」
普段の姿からは考えられないような乱れ方に彼もそろそろ限界である。卑猥な水音を大きく響かせながら、彼女を高みへと導く。嬌声がだんだんと高くなり身体が痙攣して背筋をそらせてもなお、リョーマは指の動きをやめなかった。達した直後にも与えられ続ける刺激に、の身体はそれ以上に熱くなっていく。先ほどまで溜まっていただけだった涙も、顔を伝ってシーツに落ちてしまっている。再び彼女が達しそうになった時、リョーマはふっと指を引き抜いた。 は呼吸を整えようと大きく息を吸いながら、今度こそは彼の意図を理解していた。彼に回していた腕を戻し、震える指先で彼のベルトに手をかける。リョーマが洋服を脱ぐとはっきりと怒張したそれが目に入った。
「入れるよ」
その言葉にはまたリョーマに腕を回す。彼は一回だけ優しく触れるだけのキスをした。
 ぐっ、と指とは比べ物にならない質量がの中に入ってくる。指での愛撫で焦らされたそこは、それだけでぐちゅりと音を立てた。押し入れられる熱さの圧迫感が身体に押し寄せ、同時に、中途半端なままだった快感がよみがえってくる。
「ああっ」
ぐっと身体に力が入る。リョーマを抱きしめる腕の力が入り、そして彼女の中もリョーマ自身を締め付けた。リョーマが喉の奥で苦しそうな声を出す。
「ごめん、余裕ないかも」
そう一言だけ彼は告げると、大きく動き出した。身体ごと大きく揺さぶられながらいいところを付かれていく快感に、の頭の中はもう溶けてしまったようだ。
「リョーマっ、りょーま」
幾度も彼の名前を呼び、の知らぬ間に彼を締め付ける。二人の体温は上昇していて、汗をかいた身体は異様にもぴとりと心地よく張り付いた。リョーマは彼女の手を取って絡めながらベッドに縫い付ける。そして何度も何度も浅く、深く、口づけを落とした。
 動きが速くなる。 の声も高さを増し、繋がれた手もかたくなっていく。彼女は彼を締め付け、彼は彼女を深く抉った。 の中が痙攣し収縮したその直後に、リョーマは彼女の中に全ての熱を打ち付けた。

2014.03.01

はじめてこんながっつり裏書いた気がする