こんな日にあいつは、姿を消したっけ。

 真夜中のくせにネオンが明るくて星すら見えなかったこの街から、明かりが消えてしまった日。なにやらよく分からない大停電で街の灯りが消えてしまって、その日は星空がよく見えた。いま思えば、あの時、銃声のような音を聞いたような気もする。
 その日もあいつのことを夜遅くまで待っていて、結局、日が昇ってもあいつは帰っては来なかった。まあいつかそんな日が来ることは薄々分かっていたので、特別驚きもせず、悲しみもしなかった。

 あんなに愛していたのに、涙すら流さなかった。

 昼間の気温と比べれば、夜間はまあまあ過ごしやすい。明かりの消えた街を見ながらベランダで一人、酒を煽った。

 あいつと住んでいたマンションには、惰性で未だ住み続けている。もう戻ってくることはないと思ってはいるが、もしかしたら、とも、心の隅で思っているのかもしれない。
 もう何年、そんな思いを抱き続けただろうか。
 ……明日になっていつもと同じ一日がまた始まれば、来月には引っ越すことにしよう。昔の写真は一枚だけ残して、他は全て捨ててしまおう。きっとこんなにも未練がましく思っているのはわたしの方だけなのだ。あいつはもう、誰か可愛い子でも連れているだろう。

 温くなった酒をまた煽る。夜風が気持ちよく、酔って火照った身体を冷やす。

 早く明日になってほしいような、そうではないような。
 いつもより星の多い空を見上げて溜息をつく。
「死んでないかな、KK」
ああ今日は、

やけに星が綺麗

2011.07.06