帰ってきてからジョルノの様子がおかしいとは思っていたが、本当になにかあるようだ。何かに怒っているような(しかしその原因がどこにあるのかはわからない)、そんな感じ。自分には心当たりがないために、様子のおかしいジョルノを持て余している。
「なに考えてるんですか」
言いながらも彼の動きは止まらない。いつもなら(ああ見えても)優しく抱いてくれるジョルノが、今日は押し倒してから一回もの目を見ていなかった。いつも身近にいる人がなにを考えているかわからないということが、こんなにも自分を萎縮させるものだと初めて知る。
次々とジョルノの唇がの身体を這っていく。はだけさせた衣服は、もうすでに床の上に落ちていて、わたしだけがどんどん脱がされていく。
「ジョルノ、なんか、へん?」
彼女になって短くもないのに、語尾が微妙に上がってしまうのは、未だにジョルノの全てが把握しきれていないからか。なにかあったの、と気軽に聞ける雰囲気でないこともまたそれを痛感させた。答えも聞けぬまま、ちゅっ、と、太股に華が咲いた音がする。生ぬるい舌がいやらしく内腿を這う。
「馬鹿……そんなとこに、っ」
「貴女が浮気しないようにですよ」
「そ、んな……ん、最初からしなっ、ふ」
「どうだか」
思い当たりもしないことを顔すら合わせずに言い放つ彼に、一体なにがあったと言うのだろう。
「や、あ、ぁ……」
頭の中はぐるぐる廻る。わたしは彼に疑われている……? 原因を探そうにも、彼に翻弄されていく中では、自分が何を考えているのか自分でも理解が追いつかない。そうこうしているうちに、ジョルノの指はの中を掻き回し始めた。
「っふ、ぅ……ぁ」
一本、二本。増えていく彼の指は、見掛けは細いくせに男の人の指である。力強く、そして妖艶で。しかしいつものように意思が感じられなかった。ただ、たんに、女を悦ばせているだけのような。もしくは、ただ事務的に動かしているだけのような。
「じょ、る、の……っ、ねぇ、」
彼にわたしの声は届いているのか。高くなっていく声とは裏腹に、心の中には漠然とした不安と恐怖が渦巻いていた。
「、っ、」
身体と心が、身体と頭の中が、相反している。
「もう、挿れますよ」
「ちょっ、と、待っ……や、やだっ」
引き抜かれた指に、身体は寂しさを覚えている。しかし頭では、次に来る衝撃を、恐怖している。
「口と、身体が矛盾していますが」
「ジョルノっ、じょる、の、こわい、やめっ……やだ、っあ、!」
ジョルノの熱を持った質量が入ってくる。わからない、わからない。身体は快感を感じているはずなのに、なにかが追いついていない。打ち付けられる腰に悲鳴を上げそうになるとともに、肌に触れるジョルノの衣服に寂しさを覚える。ほろほろと、生理的なのか、はたまた感情からきているのかわからない涙があふれていく。
「貴女は、僕のものです」
たまらなくなってジョルノの胸に顔を押さえつけると、ふとそこから響くように低音が聞こえた。
「誰にも渡さない……っ」
呻くようなその声も熱を帯びていて、気になって顔を上げようとするその前に、彼の手によって頭を胸に押さえつけられた。
「あ、ゃ、もう、……っ、あっ」
だんだんと早く強くなっていく動きに、思考は停止させられる。爪を立てる心配をしなくてもいいことを口実にして、わたしはジョルノに思い切り抱きついた。
2012.04.09
(腿:支配)