「痛っ」
「あれ、指切った?」
「……うん、今まであまり料理してなかったからなあ。久しぶりに包丁握った」
「女の子がいいのー、そんなことで」
「よかったの! 不自由はなかった!」
「あー、だから、こんなに良い身体してるのね」
「つまむな! 大体、虎徹のほうが料理うまいんだから、自分で作ればいいじゃない」
「はいはい叩かない叩かない。好きな女の手料理くらい食べたいでしょ、普通」
「じゃあ、好きな男の手料理くらい食べたいわ!」
「わかった、じゃあまた今度な」
「約束よ」
「はいはい……ていうかお前、指先血が出てる」
「あー、まあ舐めてれば治る」
「その方式で指先の怪我全部放置なの……」
「んー……いいの! 治るの!」
「へんなところでタフだな……それにしてもこんなに怪我しちゃって」
「いや、まあ、」
「手を隠さない! おじさんに見せてみなさい」
「えーなんでよ」
「いいから。やっぱり、思った以上に怪我してる。全部包丁?」
「そうですううう。どうも慣れないもので」
「嬉しいね、こんなに頑張ってもらえて」
「……ちょっ、と! 血が出てるんだから、舐めないの!」
「良いんだよ、このくらいなら」
「よくない!」
「おじさんこれでもちゃんのこの手には感謝してるんだけど」
「え、なんでよ」
「ん? 拙いけど、いろいろ頑張ってくれるから」
「……なんかもしかして果てしなく際どいこと言ってます? 虎徹サン」
ちゃんのえっちー」
「なに言ってんのこの人……」
ちゃんだって、俺の指には」
「それ以上言ったらころす」
「こわいこわい」
「ああもう、わかった! わかったから脇腹撫でるのやめて! せっかくつくってるのに焦がしそう!」
「あはは」

2011.07.07

(指先:尊敬)